カナダの胸肉は、どれくらい高い?
2026年8月の鶏胸肉の平均小売価格は、カナダ全国で1kg当たりCAD14.41、BC州ではCAD16.65でした。100gにすると、それぞれ約CAD1.44、CAD1.67です。一方、日本の農畜産業振興機構(ALIC)の調査では、同じ月の胸肉は通常価格で100g110円、特売価格で86円でした。
カナダ銀行が公表している2026年8月の月平均為替レート(1円=CAD0.00874、1カナダドル=約114.4円)で換算すると、日本の通常価格は100g当たり約CAD0.96、特売価格は約CAD0.75です。この条件では、BC州の価格は日本の通常価格の約1.7倍、カナダ平均でも約1.5倍になります。

この比較に使った為替レートは月平均の値で、実際に両替やカード払いで適用されるレートとは異なります。また、調査方法や皮の有無などの商品条件も完全には一致していないため、おおよその価格差を示すものです。日本の特売価格は、通常価格と区別して見る必要があります。
カナダでは、胸肉への需要が強い
カナダでは伝統的に、胸肉などの白身肉が好まれてきました。米国農務省(USDA)の2024年カナダ市場報告では、骨なし・皮なしの生鮮胸肉は、外食で広く使われ、バーベキューでも人気のある、鶏肉の中で最も高価格の部位とされています。ただし、近年は骨なしもも肉などの需要も伸びています。
一方、日本ではもも肉の人気が高く、ALICは、そのためにもも肉の卸売価格が胸肉より高くなっていると説明しています。2026年8月の日本の通常小売価格も、もも肉が100g159円、胸肉が110円でした。
どの家畜でも、1羽・1頭からとれる部位の割合は決まっていて、人気の部位だけを増やすことはできません。そのため、ある部位に人気が集まるとその部位は高くなり、ほかの部位は相対的に安くなりがちです。こうした差は輸出入である程度ならされることもありますが、後で見るように、カナダでは鶏肉の輸入が枠で制限されています。
カナダの鶏肉は、おおむね国産9割・輸入1割
カナダの鶏肉供給は、主に国内生産に支えられています。Farm Credit Canada(FCC)が2026年2月に公表した分析によると、輸入は国内の鶏肉供給の約11%を占め、その割合は近年、比較的安定しています。おおまかには、約9割が国産、約1割が輸入という構成です。
これは胸肉だけではなく、鶏肉全体についての数字です。また、2026年通年の確定実績を示すものではありません。輸入鶏肉も市場を支えていますが、カナダの供給の中心は国内生産です。そのため、国内の生産状況や供給を調整する制度が、市場を理解するうえで重要になります。
安い輸入鶏肉が、自由に増える仕組みではない
カナダの鶏肉は「供給管理制度」の対象です。生産量の管理、生産者価格の仕組み、輸入管理を組み合わせ、需要に応じた生産と生産者の経営安定を図っています。輸入には関税割当があり、一定の枠内では比較的低い税率などで輸入できますが、枠を超えると高い関税がかかります。
2026年の関税表では、枠外の生鮮・冷蔵の骨なし鶏肉に、249%、かつ最低CAD6.74/kgの税率が設定されています。すべての輸入鶏肉にこの税率がかかるわけではありません。また、国内の鶏肉価格に249%が上乗せされているという意味でもありません。この仕組みが制限するのは、海外から安い鶏肉を追加で輸入する際の価格競争です。需要が増えても、安い輸入品を無制限に増やして店頭価格を下げられる市場ではないのです。
ただし、日本との価格差の何割が制度によるものかは、今回の資料だけでは判断できません。
牛肉の値上がりも、鶏肉の需要を押し上げる
最近の価格を考えるときは、牛肉との関係も重要です。FCCは2026年の見通しで、牛肉の値上がりによって消費者が鶏肉に切り替え、需要が増えていると指摘しました。
一方、農家の販売価格とスーパーの価格は、必ずしも同じようには動きません。FCCは、加工・流通・小売段階の要因も、店頭価格に影響している可能性を挙げています。そのため、胸肉が高い理由を、飼料代や農家の値上げだけで説明することはできません。
なぜ日本との価格差が生まれるのか
カナダでは胸肉への需要が強く、最近は牛肉の値上がりで鶏肉全体の需要も増えています。鶏肉供給の中心は国内生産で、関税割当によって安い輸入品との競争も限られています。加工・流通・小売の段階の要因が店頭価格に影響している可能性もあります。一方、日本ではもも肉の人気が高く、胸肉が相対的に安くなりやすい市場です。
こうした需要と供給制度の違いが、価格差を理解する手掛かりになります。胸肉がもともと安い肉なのではなく、それぞれの国で何が好まれ、どのように供給されるかによって、その値段が形づくられているのです。