移民の流入が減れば、仕事を探す人も減り、就職しやすくなるのではないか。ところが、BC州では仕事の見つけにくさが続いている。2026年9月の失業率は6.4%と前月より改善したが、就業者数は約20,200人減少した。その約6割に当たる12,800人は、公共部門であった。

失業率が下がったのに、仕事は減っていた。その背景には、労働市場に参加する人の減少がある。そして、もう一つ見逃せないのが、これまでBC州の雇用を支えてきた公共部門の変化である。民間企業の雇用成長が鈍るなか、公共部門も人員を抑制する方向へ転じている。

失業率が下がっても、就職しやすくなったとは限らない

失業率は、働いている人と仕事を探している人を合わせた「労働力人口」に対する、失業者の割合である。仕事を持たず、求職活動もしていない人は、原則としてこの計算に含まれない。そのため、失業率の改善が、そのまま採用の増加を意味するわけではない。

9月のBC州では、就業者数が20,200人減った一方、労働力人口は22,800人減少した。仕事に就いている人よりも、労働市場に参加する人の数が大きく減ったため、失業者数も減る計算になる。失業率だけを見れば改善でも、仕事そのものが増えていたわけではなかったのである。

BC州の主な雇用指標2026年9月
失業率6.4%
就業者数の前月比−20,200人
うち公共部門の就業者数の前月比約−12,800人
労働力人口の前月比−22,800人

出典:BC Stats「Labour Force Survey Highlights」、2026年9月。

BCの雇用を増やしていたのは、公共部門だった

Business Council of British Columbia(BC州の企業団体)が2025年6月に公表した分析では、2019年以降の民間雇用の年平均成長率は1.1%だった。1976〜2024年の長期平均は2.1%であり、従来のほぼ半分のペースである。一方、公共部門は年5.4%と、長期平均の約3倍の速さで拡大していた。

雇用部門2019年以降の年平均成長率1976〜2024年の年平均成長率
公共部門5.4%1.9%
民間部門1.1%2.1%

出典:Business Council of BC、2025年6月公表分析。

ここでいう公共部門には、行政に加え、公的な医療・社会福祉、教育などが含まれる。政府庁舎で働く公務員だけの話ではない。BC州では、こうした公共サービスが雇用を増やす一方、民間企業全体の雇用拡大は以前ほど進んでいなかったのである。

伸びた専門サービス、縮んだ宿泊・飲食や支援サービス

業種別に見ると、雇用の伸びには大きな差がある。2019年1月から2025年6月にかけて、公共行政は44%、公的医療・社会福祉は40%、公的教育サービスは39%増加した。民間では、法律、会計、エンジニアリング、コンサルティングなどを含む専門・科学・技術サービスが51%増えている。

業種・部門雇用増減率
民間の専門・科学・技術サービス+51%
公共行政+44%
公的医療・社会福祉+40%
公的教育サービス+39%
宿泊・飲食サービス−7%
ビジネス・建物・その他支援サービス−15%
農業−27%

対象期間:2019年1月〜2025年6月。出典:Business Council of BC。

公共部門だけが成長していたわけではない。しかし、民間でも雇用が大きく増えた分野と、減った分野が分かれている。専門資格や経験を求める仕事の増加が、新卒者や異業種からの転職者の機会に、そのままつながるわけではない。雇用全体の増加と、自分が応募できる仕事の増加は別なのである。

2026年、公共部門も人員抑制へ

BC州政府はBudget 2026で、3年間の財政計画期間に公共部門を15,000 FTE削減する方針を示した。FTEはフルタイム換算の職員数であり、15,000人の解雇を意味する数字ではない。対象には州政府の省庁に加え、州営企業、公立学校区、大学などの高等教育機関、保健当局が含まれる。

このうち、州政府の省庁で働く職員を中心とするBC Public Serviceでは、計画期間の終わりまでに2,500 FTEを減らす目標である。主な手段は退職による自然減と自主退職である。一方、政府は重要な現場サービスを守り、医療や教育などでは必要な職種の採用を続けるとしている。

求職者にとって重要なのは、人員削減が解雇だけで進むわけではない点だ。退職者の後任を採用しなければ、既存職員を解雇せずに人数を減らせる。しかし、外から仕事を探す人にとっては、その分だけ採用の機会が少なくなる。解雇を抑えた人員削減でも、就職の入り口は狭くなるのである。

外部からの採用には、州政府幹部による承認が必要に

BC州政府は2026年8月20日、採用方針を改めた。それまでの、既存職員の同等職位への異動を優先する条件は外れた。一方、外部から採用する場合には、州公務のトップらで構成されるHiring Review Boardの承認が必要になった。

承認の対象は、公共の安全、法律上の義務、不可欠なサービスの維持などに必要で、既存の人員では対応できない場合に限られる。欠員が生じたからといって、そのまま外部採用に進めるわけではない。新たに人を雇う必要性を、厳しい条件のもとで説明しなければならないのである。

例えば、ある省庁の職員が退職しても、残る職員で業務を担えるなら、外部から後任を採用する条件を満たさない可能性がある。組織に空席があることと、外部の求職者に採用の機会があることは別である。これは州政府への就職や転職を考える人にとって、大きな違いとなる。

民間企業は、受け皿になれるのか

民間雇用の弱さを示す、もう一つの数字がある。Business Council of BCは2025年の分析で、民間雇用がコロナ前の成長トレンドを維持していれば、実際より約22万3,000件多い仕事があった計算になると指摘した。一方、公共部門の雇用は、従来のトレンドを約13万4,000件上回っていた。

部門コロナ前の成長トレンドを延長した場合と、実績との差
民間部門−223,000件
公共部門+134,000件

出典:Business Council of BC、2025年6月公表分析。過去のトレンドを延長した仮定との差であり、実際に失われた仕事や求人の件数ではない。

この比較が示すのは、民間雇用が従来の成長ペースを下回る一方、公共部門はそれを上回って拡大していたという構図である。ただし、過去の成長率、9月の単月の雇用減、州政府の採用制限は対象期間や範囲が異なり、これらだけで現在の就職難の原因や影響の大きさを特定することはできない。

そのうえで問題になるのは、公共部門が採用を抑えるなか、民間企業が新しい仕事を増やせるかどうかだ。専門サービスのように雇用を大きく増やしてきた分野がある一方、すべての求職者がそこへ移れるわけではない。必要なのは、さまざまな経験や技能を持つ人が応募できる仕事の広がりである。

働き手が減るだけでは、仕事は増えない

移民と雇用の関係では、働き手の数だけでなく、消費者としての役割も重要である。人口の伸びが鈍れば、住宅、食品、飲食、生活サービスなどの需要にも影響しうる。仕事を探す人が減っても、企業が以前と同じ人数を採用し続けるとは限らないのである。

BC州では、最近の人口動向が変わる前から、民間雇用の成長が鈍っていた。その間、公共部門が雇用を大きく増やしてきたが、今はその採用にも厳しい条件が設けられている。移民の人数や失業率だけでは、この変化は見えてこない。

これまでBC州には、拡大する公共部門という就職先があった。その採用が抑えられるとき、求職者が必要とするのは、別の場所に生まれる新しい仕事である。働き手が減るだけでは、その仕事は生まれない。公共部門の次に、誰が雇用を増やすのか。それがBC州の就職難を考えるうえでの大きな問いである。