電気料金は、実際どれくらい上がった?
カナダ統計局の消費者物価指数で見ると、BC州の電気料金は2026年8月までの1年間で4.0%、5年間では15.9%上がっています。
数字だけ見ると大きく感じますが、ほかの物価と比べると印象が変わります。同じ5年間で、BC州の物価全体(総合指数)は19.6%上昇しました。電気代も確かに上がっていますが、食料品や家賃など、ほかの多くの支出の方が上がり方は急でした。
電気料金の特徴は、上がるタイミングです。食料品のように毎月少しずつ動くのではなく、毎年4月、BC Hydroの新しい料金が始まるときに一段上がります。3月から4月にかけての上昇は、2024年が2.5%、2025年が4.4%、2026年が2.9%。それ以外の月は、ほとんど動きません。

2年続けて3.75%の値上げ
2025年3月、BC州政府は、BC Hydroの平均の値上げ率を2年間それぞれ3.75%とするよう、公益事業委員会(BCUC)に指示しました。値上げは2025年4月1日と2026年4月1日に実施され、2027年3月までの2年度分が対象です。
州政府によると、一般家庭の平均的な電気代は月およそ100ドル。3.75%の値上げは、月3.75ドルほどの負担増になります。州政府は、値上げ幅が7年続けて物価の累積の上昇率を下回る見込みだとも説明しています。
2027年4月以降の料金は、まだ発表されていません。
なぜ料金が上がっているのか
原因は一つではありません。いくつかのコストが、同じ時期に重なっています。
干ばつと、州外からの電力の購入
BC州の電気はほとんどが水力発電なので、雨や雪の量がそのまま発電量に響きます。降水量が平年を下回る年が2年続いた結果、ダムだけでは電気をまかなえなくなり、BC Hydroは州外から電力を買い入れることになりました。
Business in Vancouverは、BCUCへの提出資料をもとに、輸入がBC Hydroの必要量の約25%に達したと報じています。12か月でおよそ1万3,600GWh、金額にして約13.8億ドル。主な輸入元はアメリカとアルバータ州です。The Globe and Mailによれば、2023/24年度の上半期だけで、BC Hydroは主に輸入の増加によって4億6,300万ドルを「繰延勘定」に計上しました。
この繰延勘定を知っておくと、請求書の見え方が少し変わります。急に増えたコストをすぐ料金に上乗せするのではなく、いったん帳簿に積んでおき、何年かかけて少しずつ回収する仕組みです。負担をならす方法ではありますが、コストが消えるわけではありません。あとから料金の中で払っていく、いわば「後払い」です。この残高は、「繰延勘定レートライダー(Deferral account rate rider)」として請求額に反映されます。BC Hydroが毎年見直す割合で、プラスにもマイナスにもなります。私の2026年7〜9月の請求書では−1.5%で、わずかながら割引になっていました。
カナダ統計局のデータでも、この変化ははっきり見えます。BC州は、州外へ売る電力の方が多い年も少なくなく、2020/21年度には売った量が買った量を8.3TWh上回っていました。それが2023/24年度(4月〜3月)には逆転し、買った量が売った量を13.8TWh上回りました。その後、買い越しは2024/25年度に7.8TWh、2025/26年度に3.8TWhと縮み、2026年7月までの直近12か月では再び売り越しに戻っています。

新しい発電所と送電網への投資
州政府は、ピース川のサイトC水力発電所の運転開始や、発電設備と送電網への投資も、値上げの理由に挙げています。サイトCは、BC州の発電量を約8%増やす見込みです。ダムや送電線のような設備は何十年もかけて費用を回収していくもので、その一部が毎年の料金に乗ってきます。
電気の需要の増加
BC Hydroは、2030年までに電力需要が約15%増えると見ています。人口が増え、家の暖房や車、産業が電気に切り替わっていくためです。
物価の上昇
そして、ほかの企業と同じように、BC Hydroも人件費や機材、資材の値上がりに直面しています。
それでも、BC州の電気代は北米で最も安い水準の一つです。州政府が引用したハイドロ・ケベックの2024年の比較では、22の電力会社のうち3番目に安い料金でした。
請求書の読み方
多くの家庭は「段階料金(Tiered rate)」です。請求額は、使った量に関係なく毎日かかる基本料金と、使った電気の量に応じた電力量料金の2つでできています。
基本料金:1日23.44セント
第1段階:1kWhあたり11.87セント(請求期間中、1日22.1918kWhまでの分)
第2段階:1kWhあたり14.08セント(それを超えた分)
第1段階の上限は1日ごとに決まっているので、請求期間が長いほど枠も広がります。多くの家庭は約2か月ごと、物件によっては毎月の請求です。60日分の請求なら、最初の1,331.5kWhまでが第1段階の単価になります。使った量は同じくらいなのに請求額が違う、というときは、期間の日数が違うだけということもよくあります。
これに連邦の消費税(GST)5%がかかります。州税(PST)は、2019年4月1日から電気にはかかっていません。
2つの例で計算してみる
アパートで60日間に700kWhを使った場合は、すべて第1段階に収まります:
基本料金:60日×0.2344ドル=14.06ドル
電力量料金:700kWh×0.1187ドル=83.09ドル
合計:税抜き97.15ドル、GST込みで約102ドル
電気暖房の一軒家で、同じ60日間に2,400kWhを使った場合は、第2段階まで入ります:
基本料金:14.06ドル
最初の1,331.5kWh×0.1187ドル=158.05ドル
残りの1,068.5kWh×0.1408ドル=150.44ドル
合計:税抜き322.55ドル、GST込みで約339ドル
どちらも公表されている料金から計算したものです。実際の請求書には、もう少し項目が増えます。私の2026年7月21日〜9月17日の請求書は、59日間で546kWhでした。基本料金13.83ドルと第1段階の電力量料金64.81ドルは、料金表どおりの金額です。そこに繰延勘定レートライダー−1.5%(−1.18ドル)と、メトロバンクーバーの家庭だけにかかる地域交通税(Regional transit levy)3.68ドル(59日×0.0624ドル)が加わります。合計81.14ドルにGST5%がかかり、請求額は85.20ドルでした。自分の数字で試したい方は、Electricityのページの計算ツールを使ってみてください。
段階料金のほかに選べるプラン
2025年4月1日から、家庭向けに段階料金以外のプランも選べるようになりました。
定額料金(Flat rate)
使った量に関係なく、1kWhあたり12.70セント。基本料金は1日25.00セントです。第1段階の単価の方が安いので、定額料金が得になるのは、たくさん使う家庭に限られます。60日分の請求なら、境目は約2,200kWh、1日あたり約37kWhです。BC Hydroは、電気暖房の一戸建てやタウンハウス、二世帯住宅に向いているとしています。上の一軒家の例なら税抜き319.80ドルで、段階料金の322.55ドルより少しだけ安くなります。差は大きくありません。
時間帯別料金(Time-of-day pricing)
スマートメーターがつながっていれば、段階料金と定額料金のどちらにも組み合わせられます。夜11時から朝7時までに使った電気は1kWhあたり5セント安く、夕方4時から夜9時までは5セント高くなります。食洗機や電気自動車の充電を夜に回せる家庭には向いていますが、夕食どきに料理や洗濯が集中する家庭では、かえって高くつくこともあります。
均等払い(Equal Payment Plan)
これは料金そのものは変わりません。過去12か月の使用量をもとに毎月同じ額を払い、年に1回まとめて精算する方法です。冬の高い請求がつらい場合は、1年に分散できます。
まとめ:電気代は上がり続けるが、物価ほどではない
値上げの背景には、干ばつの年に州外から買った高い電力、サイトCを中心とした大きな設備投資、そして増え続ける需要があります。2025年と2026年の3.75%の値上げは、平均的な家庭で月3.75ドルほどです。
一方で、5年間の上昇率は電気料金が15.9%、物価全体が19.6%。BC州の電気代は、今も北米で最も安い水準にあります。とはいえ、これで請求額が落ち着くとは私は考えていません。需要も投資もまだ増えていくので、毎年4月の値上げは今後も続くと見ておく方が現実的でしょう。
家計への影響を大きく左右するのは、料金そのものより、どれだけ、いつ使うかです。電気暖房の家なら、定額料金と比べてみる。夜に使う量を増やせるなら、時間帯別料金を検討する。冬の請求が負担なら、均等払いで月々をならす。できることは意外とあります。
次の記事では、同じ使用量でBC州と日本の電気代を比べ、なぜBC州がこれほど安いのかを見ていきます。