一方、カナダのスーパーでは、いつも同じような商品が並んでいる印象がある。もちろん新商品も発売されているが、日本ほど頻繁には感じられない。

日本では新しい味を次々と発売しているのに、カナダでは定番商品が長く売られている。そんな違いがあるのだろうか。それとも、単に日本の方が人口が多く、お菓子市場も大きいからなのだろうか。

この印象は、数字で裏づけられるのか。カナダ政府が公開している食品市場データを使って、日本とカナダの発売件数を比べてみた。

発売件数は日本がカナダの約2.2倍

カナダ農業・農産食品省が公開しているMintelの食品市場データには、日本とカナダの商品発売件数が記録されている。

お菓子といっても、チョコレート、ポテトチップス、クッキー、キャンディーなど種類は幅広い。そこで今回は、両国の統計で共通する「Sweet Biscuits / Cookies(甘いビスケット・クッキー)」のカテゴリーを比べた。

日本とカナダのクッキー・ビスケット発売件数(2018〜2022年)

2018〜2022年の5年間で、日本では2,022件、カナダでは938件の発売が記録されている。

日本はカナダの約2.2倍だ。年間平均では日本が約404件、カナダが約188件。5年間のどの年も日本の方が多かった。

一方、2018年と2022年を比べると、両国とも発売件数が減少している。日本は465件から305件へ、カナダは238件から125件へ減った。

この期間には新型コロナの流行も含まれる。ただし、発売件数の減少がコロナによるものなのか、企業の商品開発方針が変わったのかは、このデータだけでは分からない。

また、ここでいう発売件数は「新しい味」の数ではない。完全な新商品のほか、既存商品の新バリエーション、再発売、パッケージ変更なども含まれている。

それでも、日本ではカナダの2倍以上の商品発売が記録されていたことになる。

人口あたりにすると、結果は逆転する

もうひとつ、見落とせない点がある。2018〜2022年の人口規模を概算すると、日本は約1億2,500万人、カナダは約3,900万人。日本はカナダの約3.2倍だ。

5年間の発売件数を人口100万人あたりに換算すると、日本は約16件、カナダは約24件になる。総数では日本が多かったが、人口規模を考慮すると結果は逆転する。

では、カナダの方が新商品開発に積極的なのだろうか。

そうとも言い切れない。

人口100万人あたりの発売件数は、市場規模を考慮するための参考指標ではあるが、実際に店頭に並ぶ商品の種類や、消費者が新しい味に出会う頻度を表しているわけではない。

例えば、全国向けに発売された商品が1種類あれば、日本でもカナダでも発売件数は1件として記録される。一方、その商品が何店舗に並び、どれくらいの期間販売されるかは別の話だ。

つまり、発売件数だけでは、スーパーのお菓子売り場がどれくらい頻繁に変わっているかまでは分からない。

では、日本の売り場で新しい味を頻繁に見かけるという印象は、どこから生まれるのだろうか。

日本では、既存商品に新しい種類を加える

日本のメーカーの商品展開を調べると、ひとつの特徴が見えてくる。

日本のベーカリー商品に関するMintelの別の調査では、2018年1月から2023年11月までに11,389件の発売が記録されている。そのうち6,448件、約57%が「New Variety / Range Extension(新バリエーション・シリーズ拡充)」だった。これは、既存の商品シリーズに新しい種類を追加するなどの発売を指す。

例えば、人気のクッキーに新しい味を加えたり、既存ブランドで違う種類の商品を出したりすることが考えられる。ただし、この統計にはクッキーだけでなく、パンや菓子パンなども含まれる。約57%がすべて新しいフレーバーという意味ではない。

それでも、調査対象となった日本のベーカリー商品では、新バリエーションが発売区分の過半数を占めていた。

消費者にとって、知らないブランドの商品を試すのは少し勇気がいるかもしれない。でも、いつも買っているお菓子に新しい味が出たら、手に取りやすい。

メーカーにとっても、すでに知名度のあるブランドを使って新しい商品を紹介できる。こうした方法は、ブランドを大きく変えずに売り場へ新鮮さを加えるひとつの戦略と考えられる。

カルビーのポテトチップスは年間約100種類の味

具体的なメーカーの例も見てみよう。

カルビーの公式FAQによると、同社のポテトチップスは常時50種類以上の味が販売されている。スーパー限定、コンビニ限定、期間限定、数量限定、地域限定などを合わせると、年間約100種類の味が発売されているという。

100種類すべてが初登場の味というわけではない。定番商品や、再発売される限定商品も含まれている。それでも、ひとつのブランドで年間約100種類もの味を展開しているのは興味深い。

しかも、日本のポテトチップスは、全国どこでも同じ商品が並ぶわけではない。地域限定の商品があったり、コンビニでしか販売されない種類があったりする。いつも利用しているスーパーとは違う店に行くだけで、見慣れない商品に出会う可能性がある。

こうした販売方法も、日本のお菓子売り場に変化が多いと感じる理由のひとつなのかもしれない。

カナダにも新しい味はある

もちろん、カナダでも新しい味の商品は発売されている。

例えば2025年7月、Rufflesは「Spicy Garlic」と「Double Crunch Korean Sweet Chili」という2種類の期間限定フレーバーを発表した。

カナダでも、定番ブランドに新しい味を追加する方法は使われている。では、カナダでは実際にどのような新商品が発売されているのだろうか。

カナダ政府のレポートでは、2018〜2022年のクッキー、スナックバー、フルーツスナックの3カテゴリーで合計2,551件の商品発売が記録されている。

そのうち889件、約35%が新バリエーション・シリーズ拡充だった。カナダでも、新しいブランドを立ち上げるだけでなく、既存商品の種類を増やすことが行われている。

なお、日本の約57%はパンや菓子パンを含むベーカリー商品全体、カナダの約35%はクッキー・スナックバー・フルーツスナックを対象とした数字だ。集計対象が異なるため、この割合をそのまま比較することはできない。

興味深いのは、カナダの新商品発売企業の上位に、Loblaws、Walmart、Sobeysなどの小売業者が入っていることだ。メーカーだけでなく、スーパーのプライベートブランドも新商品を投入している。

例えば、LoblawsのPresident's ChoiceやNo Nameのようなプライベートブランドは、カナダで身近な存在だ。

2023年のクッキー・スナックバー・フルーツスナック市場では、プライベートブランドが売上の13.0%を占めていた。

つまり、カナダでも新商品開発は行われているが、その担い手は大手菓子メーカーだけではない。ただし、カルビーとカナダの主要ポテトチップスブランドについて、年間に発売されるフレーバー数を同じ条件で比較できる統計は、今回確認できなかった。

カナダで新しい味が少ないと感じる理由については、引き続き検証が必要だ。

日本では季節限定が商品の一部になっている

日本のお菓子には、季節に合わせた商品が多い印象がある。

春には桜、夏には柑橘系、秋には栗やさつまいも。季節が変わると、商品パッケージや味も変わる。

実際、日本のベーカリー商品に関するMintelの調査では、2018年1月から2023年11月までに「Seasonal(季節商品)」という表示が1,297件、「Limited Edition(限定版)」という表示が1,025件記録されている。

発売総数に対する割合は、それぞれ約11%と約9%だ。同じ商品に両方の表示が付く場合もあるため、単純に足し合わせることはできない。

また、これは日本のベーカリー商品全体の数字であり、カナダの季節限定商品との比較ではない。それでも、季節や限定販売が商品づくりに取り入れられていることが分かる。

カナダにも、ハロウィーンやクリスマスの商品はある。秋にはパンプキンスパイス味の商品なども見かける。ただ、日本では桜や栗、さつまいもなど、季節の食材そのものを前面に出した商品が特に目立つ印象がある。

こうした違いには、季節の食材を楽しむ文化や、毎年新しいものを試してもらうための販売戦略が関係しているのかもしれない。

新しい味を次々と発売するメリットは?

そもそも、なぜメーカーはこれほど多くの種類の商品を発売するのだろうか。

理由のひとつとして考えられるのは、消費者に商品を試してもらう新しいきっかけを作れることだ。長く販売されている定番商品は、すでに知名度がある。しかし、消費者にとっては見慣れた商品でもある。

そこに新しい味が登場すれば、普段は買わない人が興味を持つかもしれないし、以前よく食べていた人がもう一度購入するきっかけになるかもしれない。

期間限定という販売方法にも特徴がある。販売期間が限られていれば、「今のうちに試してみよう」と思う人もいるだろう。

一方で、メーカーにとっては商品開発、包装、製造、在庫管理などのコストが発生する。新しい味を多く出せば、必ず利益が増えるというわけではない。

定番商品を長く販売することにも、安定した需要や効率的な生産という利点がある。新商品を頻繁に入れ替える方法と、人気商品を長く販売する方法。どちらが優れているかではなく、メーカーがどのように売り場を作るかという違いなのだろう。

結局、日本の方が新しい味は多いのか?

今回の調査では、日本のクッキー・ビスケットの発売件数は、2018〜2022年の5年間でカナダの約2.2倍だった。

しかし、人口100万人あたりに換算すると、カナダの方が多いという結果になった。

そもそも今回の統計には、再発売やパッケージ変更も含まれている。新しい味だけを数えたわけではないため、日本の方が新フレーバーを多く発売しているかどうかは、このデータでは分からない。

一方、日本ではカルビーが年間約100種類のポテトチップスの味を展開し、季節限定商品や既存商品の新バリエーションも数多く発売されている。

人口や市場規模の違いだけでなく、季節ごとの商品展開や、定番ブランドに新しい味を加える販売戦略も、売り場の印象に影響しているのかもしれない。

日本のスーパーで新しい味を頻繁に見かけるという感覚は、単純な発売件数だけでは説明できない。

どれだけ多く発売されるかだけでなく、どこで売られ、どのくらいの期間並び、いつ入れ替わるのか。本当の違いは、そうした売り方の中にあるのかもしれない。