1年で月約19ドルになる仕組み
OASは、65歳以上の人に毎月支払われる年金です。カナダの老後の収入はよく3階建てにたとえられ、OASはその1階にあたります。2階は働いていた間に払った保険料で決まるカナダ年金制度(CPP)、3階はRRSPや企業年金などの自分の備えです。
OASはCPPと違い、給料から払う保険料ではなく、税金でまかなわれています。そのため、働いた年数とOASの金額は関係ありません。65歳までカナダに住み続けた場合で比べると、次のようになります。
| 人物 | 65歳時点の居住年数 | OASの割合 |
|---|---|---|
| 25歳で移住し、30年働いた人 | 40年 | 100% |
| 40歳で移住し、25年働いた人 | 25年 | 62.5% |
| カナダで育ち、働いたことがない人 | 40年以上 | 100% |
2026年10〜12月のOASの満額は、65〜74歳で月762.50ドルです。満額には18歳以降のカナダでの居住が40年必要で、40年に足りない場合は、居住1年ごとに満額の40分の1を受け取れます。762.50ドルの40分の1が、約19ドルです。1年に満たない端数は数えません。
ただし、受け取るには最低10年の居住が必要です。国外に住んで受け取る場合は、最低20年になります。金額は物価に合わせて、1月・4月・7月・10月の年4回見直されます。OASは課税所得に含まれます。
移住した年齢で、どれだけ違う?
カナダに住み始めた年齢によって、65歳からの月額は次のようになります。移住後、65歳まで続けてカナダに住んだ場合の概算です。途中で国外に住んでいた期間があれば、その分、居住年数は短くなります。
| 移住した年齢 | 65歳時点の居住年数 | 65歳からの月額 |
|---|---|---|
| 25歳以下 | 40年 | 762.50ドル |
| 30歳 | 35年 | 667.19ドル |
| 35歳 | 30年 | 571.88ドル |
| 45歳 | 20年 | 381.25ドル |
| 55歳 | 10年 | 190.63ドル |
35歳で移住してそのまま住み続けた人は、満額の75%です。ずっとカナダに住んでいる人より月に約190ドル少なく、引退後の20年間では、今のお金にしておよそ46,000ドルの差になります。しかも、受給が始まったあとにカナダに住み続けても、金額は増えません。
受給開始を遅らせると増える
OASは70歳まで受給開始を遅らせることができます。1か月遅らせるごとに0.6%増え、70歳から受け取ると一生36%多くなります。満額の人なら、今の金額で月762.50ドルが1,037.00ドルになります。
65歳を過ぎてもまだ居住年数が増えている人には、注意点があります。遅らせたときの増え方は、「居住年数が増えた分」か「65歳時点の年数に0.6%ずつの上乗せ」のどちらか一方で、両方は受け取れません。高い方が適用されます。35歳で移住した人なら、70歳まで待つと、65歳時点の30年分に36%を上乗せした月777.75ドルになり、35年分で計算した667.19ドルより多くなります。
移住が遅かった人にとっては、遅らせることが受給資格を得る唯一の方法になる場合もあります。58歳で移住した人は、65歳では居住7年でまだ受け取れません。68歳まで待てば10年になり、月およそ190ドルを受け取れます。この場合、0.6%の上乗せは、受給資格ができる前の65〜68歳の分にはつきません。
遅らせるかどうかの目安になるのが、損益分岐点です。満額の人が70歳から受け取ると、65〜69歳の5年間に受け取れたはずの45,750ドルを、毎月274.50ドル多い分で取り戻していくことになります。税金や物価の調整を考えない単純な計算では、追いつくのは84歳近くです。それより長生きすれば、70歳からの方が多く受け取れます。
ただし、所得が低くGIS(後述)を受け取れる見込みの人は、遅らせると不利になることがあります。OASを受け取らない間はGISも受け取れず、遅らせてもGISの金額は増えないからです。
75歳になると、OASはさらに10%増えます。75歳以上の満額は月838.75ドルで、受給開始を遅らせた年金にも適用されます。
所得が高いと減らされる(クローバック)
所得の高い人は、OASが減らされます。2026年の所得では、純所得が95,323ドルを超えた分の15%が減額され、2027年7月〜2028年6月の支給分から差し引かれます。2026年10〜12月の金額では、所得が155,320ドル(75歳以上は161,320ドル)を超えると、OASは全額なくなります。なお、この全額回収となる所得は、満額のOASを前提とした金額です。居住年数が40年未満で部分年金を受け取る人は、より低い所得でもOASが全額回収される場合があります。
RRSPやRRIFからの引き出しはこの所得に含まれますが、TFSAからの引き出しは含まれません。老後の資金をどの口座から、いつ引き出すかで、受け取れるOASが変わります。これはRRSPの記事でも取り上げました。
日本の年金の期間は足せる?
カナダと日本の間には、2008年3月1日から社会保障協定があります。OASについては、国民年金や厚生年金に加入していた期間を、最低10年の受給資格に足すことができます。足せるのは原則として18歳以降の日本の加入期間で、カナダに1年以上住んでいることが条件です。日本とカナダで期間が重なっている場合は、二重には数えません。ただし、金額はカナダに住んだ年数だけで計算されます。
つまり、日本の期間は「受給資格には足せるが、金額には足せない」ということです。1年あたり約19ドルになるのは、カナダでの1年だけです。58歳で移住し、日本の年金に5年加入していた人なら、65歳からカナダの居住7年分、月およそ133ドルのOASを受け取れます。協定がなければ、ゼロでした。
国外で受け取るための「最低20年」の条件も、日本の期間を足して満たせる場合があります。将来日本に戻ることを考えている人には、知っておきたい点です。
協定は逆向きにも働きます。日本の老齢基礎年金は、2017年8月から最低10年の加入で受け取れるようになりました。この10年にも、CPPに保険料を払った期間を足すことができます。日本の年金は、日本での加入期間にもとづいて、日本から別に支払われます。日本とカナダの年金の比較は、別の記事で詳しく取り上げます。
所得の低い人には上乗せも
所得の低い高齢者には、OASに加えて、補足年金(GIS)が支払われます。2026年10〜12月は、単身者で最大月1,138.90ドルです。BC州には、さらにBC Senior's Supplementもあります。
OASが満額に届かなくても、所得が低ければGISの対象になる場合があります。実際の受給額は、OASの居住年数だけでなく、世帯の所得や婚姻状況などによっても変わります。また、家族のスポンサーシップで移住した人は、スポンサーシップの期間中、原則としてGISを受け取れません。2025年10月1日からのルールでは、この制限がスポンサーシップ契約の期間中ずっと続き、親や祖父母の場合、その期間はケベック州以外で20年です。実際の扱いは、契約の時期や条件によって異なります。GISとBC Senior's Supplementは、別の記事で詳しく取り上げます。
自分のOASを計算する
カナダに住み始めた年齢と、OASを受け取り始める年齢を入れてみてください。移住前に日本の年金に加入していた人は、その年数も入れられます。75歳からの増額や減額(クローバック)、CPPの見込み額を入れた場合は公的年金の合計も表示されます。
Loading the OAS calculator…
同じ計算ツールは、OAS計算ツールのページでも使えます。
より正確に計算したい場合は、My Service Canada Account(MSCA)にログインして、CPPの保険料の記録(Statement of Contributions)と、受給開始年齢ごとのCPPの見込み額を確認してください。その月額を「Expected CPP pension」の欄に入れると、OASとCPPを合わせた公的年金の見込みが分かります。
移住した年が、老後の収入に残る
カナダで育った人にとって、OASはほぼ決まった金額です。一方、大人になってから移住した人にとっては、移住した年が老後の収入にいちばんはっきり表れる部分です。1年ごとに月約19ドルの差が一生続き、受け取るには最低でも10年が必要です。
移住が遅かった人ほど、いつOASを受け取り始めるか、そして老後の所得をクローバックの基準より低く抑えられるかで、結果が大きく変わります。シリーズの次回は、2階にあたるCPPを取り上げます。
この記事は一般的な情報で、金融のアドバイスではありません。実際のOASの金額はService Canadaが決定します。ご自身の状況は、My Service Canada Accountで確認してください。