時給50ドルを超える業種でも、賃金の伸びが物価上昇に届かなかった。一方、5年前には平均時給が20ドルに届かなかった宿泊・飲食サービスでは、物価を上回るペースで賃金が増えていた。
BC州全体では、2021年9月から2026年9月にかけて平均時給が約26.0%上昇した。同じ期間の物価上昇率は約19.2%。物価を調整した実質平均時給は約5.8%増えており、全体としては賃金が物価に追いついた計算になる。
しかし、その中身は業種によって大きく異なる。高賃金の専門サービスでは実質平均時給が1割以上伸びた一方、同じく高賃金の公益事業では低下した。高給なら物価高に強いとは言えない。現在の時給と、そこから買えるものがどれだけ増えたかは、別なのである。
時給50ドル超でも、物価上昇に届かなかった
2021年9月、BC州の主要16業種のなかで平均時給が最も高かったのは、電気・ガス・水道などの公益事業である。平均時給は50.90ドル。専門・科学・技術サービスの40.84ドルを、約10ドル上回っていた。
2026年9月の公益事業の平均時給は53.42ドルとなったが、5年間の上昇率は約5.0%にとどまった。同じ期間にBC州の物価は約19.2%上昇している。額面の時給は増えたものの、物価調整後では約11.9%低下した計算になる。
| 業種 | 2021年9月の平均時給 | 2026年9月の平均時給 | 5年間の上昇率 |
|---|---|---|---|
| 公益事業 | $50.90 | $53.42 | +5.0% |
| 専門・科学・技術サービス | $40.84 | $54.08 | +32.4% |
| 宿泊・飲食サービス | $18.88 | $24.02 | +27.2% |
出典:Statistics Canada、表14-10-0063-01。金額は税引き前の平均時給、カナダドル。
一方、法律、会計、エンジニアリング、コンサルティングなどを含む専門・科学・技術サービスは、約32.4%上昇した。2026年9月の平均時給は54.08ドルとなり、この月の比較では公益事業を上回った。もともと高賃金だった二つの業種でも、その後の動きは分かれていた。
なお、これは各年9月の月次推計の比較であり、年平均の順位ではない。公益事業のように従業員数が比較的少ない業種では、月ごとの推計値の変動にも留意する必要がある。
宿泊・飲食は、低い水準から物価を上回って伸びた
宿泊・飲食サービスの平均時給は、2021年9月の18.88ドルから、2026年9月には24.02ドルになった。5年間で約27.2%の増加である。物価を調整した実質的な伸びも約6.8%で、BC州全体の約5.8%を上回った。
ただし、現在の平均時給はBC州全体の39.49ドルより約15ドル低く、公益事業の半分にも届かない。伸び率では改善していても、賃金水準そのものの差は大きい。「低い水準から伸びた」ことと、「十分な収入を得られる」ことは分けて考える必要がある。
| 業種 | 5年間の賃金上昇率 | 物価調整後の変化 |
|---|---|---|
| 専門・科学・技術サービス | +32.4% | +11.1% |
| 宿泊・飲食サービス | +27.2% | +6.8% |
| BC州全体 | +26.0% | +5.8% |
| 医療・社会福祉 | +19.6% | +0.4% |
| 公益事業 | +5.0% | −11.9% |
対象期間:2021年9月〜2026年9月。同期間のBC州の総合CPI上昇率は約19.2%。出典:Statistics Canada、表14-10-0063-01、18-10-0004-01。変化率と物価調整はEveryday Indexによる計算。
医療・社会福祉は、時給が6ドル以上増えても実質ほぼ横ばい
医療・社会福祉の平均時給は、32.70ドルから39.11ドルへ上昇した。1時間当たり6.41ドルの増加である。額面では大きな変化に見えるが、上昇率は約19.6%で、同期間の物価上昇率とほぼ同じだった。
物価調整後の伸びは約0.4%。平均的な物価を基準にすると、この業種の平均時給で買えるものは、5年前とほとんど変わっていない。増えた時給の大部分は、値上がりした商品やサービスを買うために必要だった計算になる。
さらに直近1年では、平均時給は39.01ドルから39.11ドルへ約0.3%増えた一方、物価は約3.0%上昇した。この期間の実質平均時給は約2.6%の低下である。5年間では購買力をほぼ維持していても、最近1年では後退するという違いが出ている。
平均時給の伸び悩みは、昇給だけの問題なのか
医療・社会福祉の数字を見ると、「そこで働く人の昇給が少なかったのか」と考えたくなる。しかし、平均時給は同じ人を追跡した数字ではない。その月に働いている人たちの構成も、結果に影響する。
例えば、経験豊富な高賃金の職員が退職し、経験の浅い職員の採用が増えれば、既存職員が昇給していても平均は伸びにくくなる。反対に、低賃金の仕事が減ることで平均が上がる場合もある。今回の数字だけでは、昇給とこうした構成変化の影響を分けることはできない。
ここで見ているのは、あくまで業種ごとの平均時給の変化である。医療・社会福祉や教育には公的・民間の事業者が含まれ、公共部門だけを示す数字でもない。月次推計には標本調査による変動もあるため、個人の待遇や給与改定をそのまま表すものではない。
物価を上回った業種、届かなかった業種
主要16業種を並べると、林業・漁業・鉱業などや専門サービスでは、物価調整後でも平均時給が1割以上上昇していた。一方、ビジネス・建物・その他支援サービスや情報・文化・娯楽では、賃金上昇が物価に届かなかった。
比較した16業種のすべてで、額面の平均時給は上昇していた。しかし、物価調整後も増えていたのは13業種で、3業種では低下していた。給与明細の金額が増えていても、その増加が物価上昇に吸収されてしまう場合がある。
26%の賃金上昇が、26%の余裕にならない理由
BC州全体の変化を100ドルに置き換えると、2021年に100ドルだった平均的な買い物が約119ドルになり、同じ時間働いて得られる平均賃金が100ドルから約126ドルになった、と考えられる。物価には追いついたが、買えるものの増加は約5.8%である。
さらに、CPIは平均的な支出構成に基づく指標であり、家賃や食費の負担が大きい家庭では実感が異なる。平均時給は税引き前で、働く時間の増減も含まない。時給が上がっても勤務時間が減れば、毎月の手取りが増えないこともある。
高給なら安心、とは限らない
この5年間のBC州では、高賃金の公益事業で物価調整後の平均時給が低下し、宿泊・飲食では低い水準から改善した。専門サービスは高い賃金水準と大きな伸びを両立し、医療・社会福祉は額面で6ドル以上増えても購買力をほぼ維持するにとどまった。
仕事を選ぶとき、現在の時給はもちろん重要である。しかし、その高さだけでは、物価上昇のなかで収入が持ちこたえるかまではわからない。時給50ドルでも、買えるものが減ることはある。給料の本当の伸びは、給与明細の数字と物価を並べて初めて見えてくる。
最新の業種別賃金データを見る
Wage Growthでは、主要16業種の賃金上昇率とCPI、物価調整後の伸びをグラフで比較できる。BC州・カナダ、過去1年・3年・5年を選んで、その後の変化を確認できる。
データと計算方法
賃金はStatistics Canadaの労働力調査による、15歳以上、全性別、フルタイム・パートタイムを合わせた従業員の平均時給である。自営業者は含まない。賃金とCPIはいずれも季節調整前のデータを使い、2021年・2025年・2026年の9月を比較した。5年間の上昇率は累計であり、年平均ではない。
実質賃金の変化率は、次の式で計算した。表示上の丸めにより、表の数字から計算した結果とわずかに異なる場合がある。
実質変化率={(現在の平均時給 ÷ 過去の平均時給)÷(現在のCPI ÷ 過去のCPI)−1}×100
